Saadi Ⅰ
Les roses de Saadi
J'ai voulu ce matin te rapporter des roses ;
Mais j'en avais tant pris dans mes ceintures closes
Que les noeuds trop serrés n'ont pu les contenir.
Les noeuds ont éclaté. Les roses envolées
Dans le vent, à la mer s'en sont toutes allées.
Elles ont suivi l'eau pour ne plus revenir ;
La vague en a paru rouge et comme enflammée.
Ce soir, ma robe encore en est tout embaumée...
Respires-en sur moi l'odorant souvenir.
Marceline DESBORDES-VALMORE (1786-1859)
サアディの薔薇
この朝 きみに薔薇を捧げんと思い立ちしを、
摘みし花むすべる帯にいとあまたはさみ入るれば、
張りつめし結び目これを抑ふるにすべなかりけり。
結び目は破れほどけぬ、薔薇の花、風のまにまに
飛び散らひ、海原めざしことごとく去って還らず。
忽ちにうしほに浮かびただよひて、行手は知らね、
波、ために紅に染み、燃ゆるかと怪しまれけり。
今宵なほ、わが衣、あげて移り香を籠めてぞくゆる・・・
吸ひ給へ、いざわが身より、芳しき花の想ひ出。
ヴァルモール (斎藤磯雄訳)
サアディのバラ*1
けさ、あなたにバラの花を捧げたいと思いました
けれど、あんまりたくさん、帯にさしこんだので、
結びめがきつくなり、うまくしばれませんでした。
やがて、結びめはとけ、バラは、とび散り、
風に舞い、全部が、海へ、落ちてしまい、
汐のまにまに、流れ去り、もはや戻ってきませんでした。
波は、バラで赤くなり、火ともえるようでした
こんやもまだ、わたしの服には、バラの香りが残っています・・・
かいでみませんか、かぐわしい思い出を、このわたしの身から。
(ヴァルモール詩集『愛の涙はもういらない』より引用)
*1:もう少し簡単に訳されたもの